吾輩は水宮神社に使へる蛙である。
当社はその昔、里修験として活動し
室町時代になって魔訶山般若院を創建。
当時は神様と仏様が仲良く同居して
力を合はせ、真心こめて
加持祈祷がなされてゐた。
病気で患ふものあれば医者に代はって祈り
争ひ事や相談事あれば
弁護士の顔になって解決し
家庭で悩み事などあれば
教育者となって相談相手になってきた。
傍ら寺子屋を営み吾輩を始め
多くの仲間を教へ導き育ててくれた。
吾輩はあるとき、
人間のやうに立って歩いてみたいと思ひ、
神様にお願ひしたところ、
その願ひが叶ったのだが立ってみたら
吾輩の目玉は後ろになってしまひ
前に進むのが不自由になってしまった。
元の姿に戻れるやう、
再び神様にお願ひしたが許されず
泣きべそをかいて困ってゐたところ
大日如来様が憐れんで元に戻してくれた。